HON.jp メールマガジン #343 2025年9月29日版 Subject: HON.jp メールマガジン #343 2025年9月29日版 From: HON.jp編集部 Date: 2025/09/29 6:01 To: honjp@aiajp.org 📙週刊出版ニュースまとめ&コラムやHON.jpからのお知らせなどをお届けします。 HON.jpロゴ HON.jp メールマガジン #343 2025年9月29日版 【自社広告】 チームで行う創作と出版のワークショップ「NovelJam 2025」を10月11日~13日に開催します。東京・札幌・沖縄の三拠点同時開催に向けたクラウドファンディングは10月1日まで。ゼロから作品を生み出すクリエイターの発掘育成活動をぜひご支援ください! https://motion-gallery.net/projects/noveljam2025 週刊出版ニュースまとめ&コラム #683(2025年9月21日~27日) 【写真】Books Kinokuniya Tokyo  編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。同じ内容を HON.jp News Blog のウェブサイトでも同時に公開していますので、SNSでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。 https://hon.jp/news/1.0/0/56564   【政治】   ◆ 【連載】用紙規制「EUDR」のリスクと対策② 用紙原料の伐採地点情報が残るピース 佐藤弘志(日販IPS)〈The Bunka News デジタル(2025年9月22日)〉 https://www.bunkanews.jp/article/436851/   まず強調したいのが、EU域内の多くの関係者や複数の森林認証機関が「まだどうなるか分からない」とコメントしていることだ。適用開始まで4カ月を切っているが、今後さらなる運用ルールの変更はありうるという声を多く聞く。    うーわ、それいまから対応しようと思ってもできないやつじゃありませんか。アメリカ・トランプ政権の関税政策にも振り回されていて、バーター取引みたいな状態になっているようです。本気でこのままやる気なのか? と思っていたら案の定でした。   ◇ EU、森林破壊防止規則の開始をさらに1年延期へ 欧州メディア報道〈ESGグローバルフォーキャスト(2025年9月25日)〉 https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/forecast/atcl/news/092500064/   ◇ 欧州委員会 「EUDR」再延期を提案 ITシステム容量不足理由に〈The Bunka News デジタル(2025年9月26日)〉 https://www.bunkanews.jp/article/437349/    あくまで現時点ではまだ「提案」で、再延期が承認されるかどうかはわかりません。推進派が猛反発しているという情報もあり、まだ一悶着ありそうです。確認できた範囲では、WWF EUが「これは恥ずべき動きだ」みたいな怒りのリリースを発表していました。   ◆ Apple幹部がEUのデジタル市場法に「公平な競争ではない」と猛反発 “過激な解釈”で日本の「スマホ新法」に影響も?〈ITmedia Mobile(2025年9月22日)〉 https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2509/22/news059.html    欧州で端末シェア1位はサムスン電子なのですか。でもEUのデジタル市場法(DMA)が対象としているのは「一定規模以上のプラットフォームである『ゲートキーパー(gatekeeper)』」ですから、Appleが比較対象にすべきなのは端末メーカーではなく、OSを提供している企業ですよね。そして、Googleはこの規制の対象になってますから、なんだか論点が少しズレている気がします。   ◆ Google、広告独占で再び分割危機 米連邦地裁で是正審理開始〈日本経済新聞(2025年9月23日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22BEA0S5A920C2000000/    Google検索のほうは分割危機を免れましたが、広告独占はどういう判断になるか。検索は創業以来の自社事業ですが、ディスプレイ広告技術はもともとDouble Click, Inc.ですもんね。買収・吸収合併された要素は、分割可能だと判断されてもおかしくありません。    ただ、私はいまのウェブ広告の惨状は「だいたいGoogleが悪い」と思っていますが、もしディスプレイ広告がGoogleの手から離れたらもっと悲惨な状況に陥るかもしれない、という想像もしています。それくらいこの業界に対する不信と絶望は深い。悪い中でも、Googleはマシなほうですから。   ◆ アマゾンは「利用者をだましてプライムに誘導」したのか? FTCとの裁判が開始〈CNET Japan(2025年9月24日)〉 https://japan.cnet.com/article/35238321/    私はアマゾンのプライム会員をやめてから10年くらい経ちますが、たまに買い物をするとプライム会員を契約させるためあの手この手で引っかけようとしてくるのが大変不快です。実際に一度、気づいたら再入会しちゃってましたし。すぐ解約できて、料金もかからなかったので実害はありませんでしたが。いわゆる「ダークパターン」だと認定されれば、少しは改善するかしら……と思っていたら。   ◇ Amazon、米当局と3800億円で和解 3500万人にプライム会費返金〈日本経済新聞(2025年9月26日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN25CS60V20C25A9000000/    あっという間に和解しちゃいました。この辺り、したたかだなあ。   ◆ 周回遅れ「デジタル教科書」、英語や理科に効果期待 海外では見直しも〈日本経済新聞(2025年9月24日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD269JG0W5A820C2000000/    ようやく確定。デジタル教科書推進ワーキンググループの審議まとめはこちら。主査代理の中川一史氏へのインタビューはこちら(朝日新聞)。読売新聞や産経新聞はいまだ紙に固執している論調のままです。日経はタイトルに「周回遅れ」と入れていますが、本文は比較的フラットな感じです。   ◆ 「AI学習の対価」の基準に? 米新興と作家の2200億円和解案を仮承認〈日本経済新聞(2025年9月26日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN256430V20C25A9000000/    Anthropic訴訟の和解案続報です。判事が承認を延期していましたが、結局そのまま仮承認となりました。これから原告と同じ立場の作家たちから意見を募り、問題なければそのまま正式承認になるそうです。   【社会】   ◆ 自作のZINEが断り無く表紙や中身に使われている人が続出「せめて許可を」「引用の範囲では」「本質に関わる」〈Togetter(2025年9月22日)〉 https://togetter.com/li/2606062    無断で利用できる権利制限「引用(著作権法第32条)」という観点で言えば、本文で紹介するための利用と、ムックの表紙への利用とは、切り分けた方がいいでしょう。本文での「紹介」は公正な慣行に合致し引用で通る可能性もあると思いますが、ムックの表紙への利用は引用では通らないように思います。抗議している方がいることも確認していますが、宝島社はいまのところだんまりのようです。まあそれでも、無断利用を咎めて差し止め請求までやるような人はまずいないと思いますが。    ちなみに、私が制作した本の表紙は版元ドットコムの「書誌・書影の 読者など(第三者)への 利用承諾で、本を広めよう」という呼びかけに応えたので【利用可】になっています。書誌情報はJPRO経由(取次ルートで流通させていないけどISBNや2段バーコードにも対応している)ですが、書影はHON.jp Booksから取得してもらってます。この辺りの詳しい経緯は「版元ドットコムとopenBDプロジェクトは“だれもが自由に使える書誌・書影”を再び提供するためホワイトリスト作成という正攻法に出た」をご参照ください。   ◆ 日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由〈ニューズウィーク日本版(2025年9月23日)〉 https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2025/09/570128.php    1ページ目の下にページ分割が12まで表示されているのを見て、続きを読む気が失せました。ちなみに1ページ目の本文は文字数が600字弱です。広告費を少しでも稼ぐための姑息療法なんでしょうけど、あまりにひどい。全画面広告が2重に出たりしますし。この記事はYahoo!ニュースにも配信していて、4分割&広告も少ないから断然読みやすいのですよね。つまり、本拠地からユーザーが逃げるのを自らの手で促進しているわけです。バカなのかな?   ◆ 動画SNSでニュース見る人ほど、陰謀論的思考が強く…新聞利用者は逆の傾向に〈読売新聞(2025年9月26日)〉 https://www.yomiuri.co.jp/national/20250926-OYT1T50125/   ◇ 日本における対立意識と「陰謀論」 〜ニュース情報源で「陰謀論的思考の傾向」に差 スマートニュース・メディア価値観全国調査2025|ニュースルーム〈スマートニュース株式会社(2025年9月26日)〉 https://about.smartnews.com/ja/news/2408.html    タイトルだけを見た段階で「読売新聞の牽強付会?」と思ったのですが、スマートニュース メディア研究所による調査でした。失礼しました。スマートニュースのプレスリリースには「陰謀論スコア(項目1から5の平均点)の分布に明確な違いが見られました」とあるんですが、グラフを見ると……うん、まあ、確かに違いはありますけど、大した差はない気もします。むしろ、新聞を読んでいても陰謀論に染まっちゃう人はそれなりにいるのだな、という印象です。   【経済】   ◆ 【最新米メディア報告】日本のMangaサイトは米国でどこまで成長できるか(大原ケイ)〈The Bunka News デジタル(2025年9月25日)〉 https://www.bunkanews.jp/article/437106/   書籍がことごとくデジタル化される以前から、アメリカにおけるマンガ市場の変遷を見てきた者にとっては、年商13億ドルとも言われる昨今の人気ぶりは、当然の成り行きだとも思えるし、よくぞここまで浸透したものよと、驚かされることもある。    冒頭のこちらを読んで「もう年間13億ドルもあるのか」と驚いたのですが、よくよく調べてみるとちょっと疑問符をつけておきたい数字です(人気ぶりは確かだとしても)。ここには出典が書かれていないのですが、恐らく2025年7月にジェトロから出ていた「漫画関連サービス・商品に関する米国市場レポート」だと思われます。「北米のコミック市場は2024年時点で約13~15億ドル」という記述があったことが確認できました。  Google検索結果のスクリーンショット   実はこちらの画像は、Google検索のキャッシュです。このPDFはすでにジェトロのサイトからは消えています。残念ながらWayback MachineやWARPにも残っていませんでした。ソースになっているGrand View Researchのことを調べてみたら、公式サイトに記載されたサンフランシスコの住所は一等地なんですが、どうやらバーチャルオフィスっぽい。本社はインドの会社みたいです。Redditで酷評されてるスレッドも見つけました。    ジェトロがなぜこのレポートを消したか、理由はわかりません。ジェトロのサイト内を検索すると、Grand View Researchを出典にしているレポートはまだ他にもたくさん確認できます。ただ、実はこういう怪しげな調査会社って、他にもたくさんあるんですよね。だいたい同じようなフォーマットを使っていて、それこそ鉛筆を舐めたような適当な数字を「市場規模」みたいな感じで発表しているっぽい。    こやつらからは、ありとあらゆる分野の市場調査レポートのプレスリリースが毎日大量に届きます。それこそ「ドローンタクシー市場」みたいに現時点では存在しない分野の場合もあるほどです。だから私は、Gmailのフィルタで隔離して見ないように自衛しています。周囲でわりと盛大に引っかかった事例がQY Researchのウェブトゥーン市場調査と言えばわかりやすいでしょうか。気をつけたいところです。   ◆ Crunchyroll Manga to Launch in October(クランチロールのマンガが10月にスタート)〈Publishers Weekly(2025年9月25日)〉 https://www.publishersweekly.com/pw/newsbrief/index.html?record=5576   ◇ Link-Uグループとクランチロールが提携し、マンガサービス「Crunchyroll Manga」を10月9日より提供開始〈Link-Uグループ株式会社のプレスリリース(2025年9月26日)〉 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000098.000038982.html    2025年1月に、Crunchyrollがマンガアプリを開始するというニュースを見たとき、ソニーグループ入りしたことを活かして日本企業のプラットフォームを使うのではないかと予想していたのですが、Link-Uでしたか。調べてみましたが、ソニーとLink-Uに資本的な関係はないようです。どういう経緯でこのポジションに収まったのか、少し気になります。   【技術】   ◆ Photoshop β版が「nano-banana」対応 「生成塗りつぶし」で他社モデル選べるように〈ITmedia AI+(2025年9月26日)〉 https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2509/26/news101.html    生成AIの出力性能だけで比較すると、これにより「Adobe Firefly」離れが起きることが予想されます。ただ、学習ソースに許諾済みのものだけを利用しているという「安全性」を考慮すると、まだ「Adobe Firefly」にもニーズはあると思うのですよね。実際、Googleは学習ソースを明かしてませんから。 よかったらこの記事をシェアしてください! Xでシェア Facebookでシェア Mastodonでシェア Blueskyでシェア 【雑記】  少し秋らしくなってきました。朝晩は外を歩くのが気持ちいい。しかし、家の中ではまだエアコンが要ります。窓を開けても風が通らないんですよね……さすがに玄関のドアを開けっぱなしにはしづらい。(鷹野) 本稿は CC BY-NC-SA 4.0でライセンスされています。転送歓迎。ウェブなどへ転載する際は、HON.jp メールマガジンが出典であることを表記するのと同時に、HON.jp News Blogへのリンクを張っていただけると嬉しいです。 https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja NPO法人HON.jpは、本(HON)のつくり手をエンパワーする非営利団体です。「HON.jp News Blog」などのメディア事業、「HON.jp Books」などの出版事業、セミナー・カンファレンス・出版創作イベント「NovelJam」などのイベント事業を行っています。   事業収入だけでこれらの活動を継続するのは難しく、会費や寄付などみなさまのご支援が不可欠です。会員は随時募集中でさまざまな特典もご用意しています。さらなるご支援をお願いいたします。   ◆ 入会案内 https://www.aiajp.org/application ◆ 寄付のご案内 https://www.aiajp.org/donation ◆ 広告掲載のご案内 https://hon.jp/news/ad 発行人:NPO法人HON.jp 編集人:HON.jp News Blog編集長 鷹野凌 mail: honjp@aiajp.org 配信数:2563通 このメールマガジンは、HON.jp からのお知らせや、HON.jp News Blog 編集長 鷹野凌による「週刊ニュースまとめ&コラム」などを、原則、毎週月曜日の朝に配信しています。配信対象は、HON.jp News Blog から購読を申し込まれた方々と、これまで HON.jp とご縁があった方々です。   配信には Benchmark Email を利用しています。メール内のリンクはすべて bmetrack.com のサブドメインに自動変換されています。これは、Benchmark Email のシステムが開封率やクリック率などを計測しているためです。計測後、本来のURLへ自動転送されます。   不要な場合はお手数ですが、末尾の「配信停止」からお手続きください。 フォローして最新情報をチェック! Facebook Twitterでシェア Twitterでシェア 正しく表示されない場合はこちら このメールは、NPO法人HON.jpからのメール配信をご希望された方に送信しております。今後も引き続きメールの受信を希望される方は こちらをクリック してください。 今後メールの受信をご希望されない方は、こちらから配信停止手続きが行えます。 本メールは honjp@aiajp.org よりhonjp@aiajp.org 宛に送信しております。 関町北3-3-12 NSビル201, 練馬区, 東京都 177-0051, Japan 全てのメーリングリストから配信を停止する。 配信停止 | 登録情報更新 | 迷惑メールと報告する