HON.jp メールマガジン #283 2024年6月17日版 Subject: HON.jp メールマガジン #283 2024年6月17日版 From: HON.jp編集部 Date: 2024/06/17 6:02 To: honjp@aiajp.org 📙週刊出版ニュースまとめ&コラムやHON.jpからのお知らせなどをお届けします。 HON.jpロゴ HON.jp メールマガジン #283 2024年6月17日版 ISSN 2436-8245  やばい、こんどは大学の仕事が滞ってる(鷹野) 【お詫びと訂正】前回のHON.jpメールマガジン(#282)の件名に誤って「2024年6月9日版」と記載していましたが、正しくは「2024年6月10日版」でした。お詫びして訂正いたします。申し訳ありません。 【自社広告】 直営オンラインショップ「HON.jp Books」にコンテンツ流通基盤ソリューション「DC3」を採用、ご購入いただいた電子書籍をブラウザビューアで閲覧できるようになりました。 https://hon.jp/news/books 週刊出版ニュースまとめ&コラム #623(2024年6月9日~15日) 啓文堂書店 三鷹店  編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。同じ内容を HON.jp News Blog のウェブサイトでも公開していますので、SNSでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。 https://hon.jp/news/1.0/0/48318   【政治】   ◆ 「1円も値引きできない」家電、なぜOK? 値札の「指定価格」とは〈朝日新聞デジタル(2024年6月11日)〉 https://www.asahi.com/articles/ASS6626B1S66OXIE020M.html    直接「出版」には関わらない記事ですが、制度的には興味深いと思いピックアップ。定価販売拘束(再販売価格維持行為)は基本的に禁止されていますが、なぜこの「指定価格」は許されるのか? という話です。「指定価格」の場合、小売店は売れ残りを返品できるので、在庫リスクをメーカーが負っている形だからとのこと。公取委のお墨付きだそうです。    これって実質、再販売価格維持行為の例外として定価販売が認められている書籍・雑誌と同じことですよね。違いは「定価」という言葉を使っていないだけと言っていい。これを公取委が是とするのなら、著作物再販制度を廃止することも当面はなさそう?    とするとこんどは、公取委はなんのために再販制度の柔軟な運用を求めてきたのか? という話になってしまいそうな気が。ただ単に「定価」という言葉を使わなければいいだけの話なのでしょうか? うーむ。   ◆ 巨大IT新法成立 アプリ競争促す、25年末までに施行〈日本経済新聞(2024年6月12日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA11BLA0R10C24A6000000/    巨大IT企業が対象なのですが、実質はAppleを狙い撃ちにした新法と言っていいでしょう。Androidは設定を変えるだけでサイドロードが可能ですし、Amazonアプリストアみたいに、他のアプリストアの併存が可能ですから。ただ、既報どおりなら、野良アプリをなんでもインストール可能とするサイドロードではなく、他のアプリストアの参入を監視付きで認めよという内容だと理解しています。   ◇ EU、Appleをデジタル新法違反と判断へ FT報道〈日本経済新聞(2024年6月15日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR14EUQ0U4A610C2000000/    ただ、日本が参考にしたEUのデジタル市場法(DMA)では、Appleが条件付きで他のアプリストアの導入を認めたにも関わらず、それでもまだ足らないという判断になりそうです。日本もEUのように厳しい運用ができるのでしょうか?   ◆ 「スラダン酷似ビラ」自民系候補が超絶マズい理由 「著作権法に抵触する可能性」以外の問題点も | インターネット〈東洋経済オンライン(2024年6月13日)〉 https://toyokeizai.net/articles/-/762029    こちら、初報の時点で「パロディだから許される」とか「構図に著作権は発生しないのでセーフ」と断定する擁護意見が飛び交っていて、首を傾げていました。日本の著作権法にパロディ規定はないですから、まずは著作権者(この場合、井上雄彦氏)が許すかどうか。いわゆる「寛容的利用」です。    仮に裁判になったとしても、作品の類似性は個別の事例で判断されるので、判決が出るまで断定するのは難しい。知財高裁で判断が逆転(原告が勝利)した「金魚電話ボックス事件」を思い出します。本件も、法律の専門家による解説記事を複数読みましたが、やはり「抵触しない可能性が高い」など、断定は避けていました。 https://bijutsutecho.com/magazine/insight/23433    そういう意味で、こちらの解説は納得がしやすいです。確かに、著作権法に抵触しなかったとしても、「著作権法に抵触する可能性」を多くの人が疑った、あるいは、嫌悪感を示した時点で、そもそも選挙ポスターとしては失敗しています。まあ結局、選挙にも負けてますし。    そういう意味では、アナログ機材をプレス機で破壊する新iPadのプロモーションビデオ炎上や、コロンブスを題材としたミュージックビデオ炎上のほうが、著作権法とは関係なくても、事例としてはむしろ近いのかも。   ◆ 【書店振興プロジェクト】「骨太の方針」に書店活性化盛り込まれる見通しに 第2回「車座ヒアリング」で齋藤経産相が報告〈BookLink(2024年6月13日)〉 https://book-link.jp/media/archives/14870    本質的なことではないのですが、どうしてこれを「車座」と呼ぶのかが気になってしまいました。車座って、輪になって向かい合って座ることを言うはずですよね。登壇者がほぼ一直線に並んで座っている写真を見て「これは車座じゃないよな……」と思ってしまいました。これはせいぜい「弧」でしょう。    あと、記事にある「売上率」という言葉にも引っかかってしまいました。これは売上高営業利益率(粗利率)のことなのか、在庫消化率なのか、あるいは、商品別の売上比率なのか。粗利率のことなら、新刊書店で44%はあり得ない。けど、初期在庫を市が負担しているし、古本や洋書もあるから、もしかしたら?    いやいや、シンプルに在庫消化率、つまり、売上冊数÷仕入冊数か? その可能性は高そうだけど、分母は初期在庫だけなのか累計なのか。あるいは、実は新刊書籍の売上比率が44%だったり? などなど、いろいろ考えてしまいました。Facebookで周囲に尋ねてみても、解釈がいろいろあり得るから断定は難しい感じ。    恐らくこの「売上率」というのは、登壇者の言葉そのままなのでしょう。だけど、記事で使うなら括弧書きで補足する必要があるように感じました。私も気をつけよう。   ◇ 図書館・書店等連携実践事例集〈文部科学省(2024年6月12日)〉 https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/mext_00001.html    で、この「車座ヒアリング」にタイミングを合わせたのでしょうか。文部科学省から図書館と書店の連携事例集が公開されました。北から南まで51件の事例が紹介されています。ざっと目を通しましたが、思ったより「図書館で本を販売する」事例がありました。    同じ商業施設内に書店と図書館が併設されてる事例は連携して当然の話ですが、図書館を会場としてイベントを開催するとき一緒に本を販売している事例がいくつもありました。気仙沼図書館、埼玉県立熊谷図書館、名古屋市守山図書館・志段味図書館、岡崎市立中央図書館などがそうです。    実は以前、某公共図書館の研修会に登壇したとき「図書館は書店とどのように連携すればよいと思うか?」という質問を受けました。私はとっさに「図書館でのイベント開催時に、書店が出張販売するのはどうか」と答えました。そういう事例を聞いたことがありましたし、書店は商売ですから、やはり売上に直結する話がうれしいと思う、と。 http://jimbunshoin.co.jp/rmj/honyatocomputer133.htm    この事例集でも、実際にそういう連携が各地で行われていることがわかり、少しホッとしました。そして、もっとそういう事例が増えればいいのに、とも思いました。   【社会】   ◆ 小田光雄 逝去のお知らせ〈出版・読書メモランダム(2024年6月12日)〉 https://odamitsuo.hatenablog.com/entry/2024/06/12/093602    ご冥福をお祈りいたします。『出版業界の危機と社会構造』『出版社と書店はいかにして消えていくか』『ブックオフと出版業界』などの著書を拝読しています。そして実は、私がこのまとめを始めたきっかけは、小田氏が毎月ブログで更新していた「出版状況クロニクル」でした。小田氏が毎月更新なら、私は毎週更新だ! と密かに対抗意識を燃やしていたことを思い出します。それでも、毎月の数字を定点観測・配信するのは遠慮していました。今後はその役割を引き継ぎます。どうか安らかにお休みください。   【経済】   ◆ ニコニコおよびKADOKAWAグループのサイトに週末から大規模なサイバー攻撃か。10日朝時点でも復旧せず【追記あり】〈INTERNET Watch(2024年6月10日)〉 https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1598619.html   ◇ 【第2報】KADOKAWAグループにおけるシステム障害について〈株式会社KADOKAWAのプレスリリース(2024年6月14日)〉 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000014872.000007006.html    初報では「大規模なサイバー攻撃」だけでその種類まではわからなかったのですが、第2報でランサムウェア(身代金要求型マルウェア)であることが明かされました。これは大変だ……決して他人事ではありません。もし自分がやられたら? と思うと、背筋が寒くなります。並みの会社じゃ耐えられないでしょう。    なお、本稿執筆時点で、同じKADOKAWAグループでも、ブックウォーカーのストア事業「BOOK☆WALKER」、メディア事業「読書メーター」「カドコミ(旧ComicWalker)」、プラットフォーム事業の「dマガジン」「dブック」「コロナEX」「一迅プラス」あたりは無事です。ただ、ドワンゴ→トリスタから継承した「ニコニコ漫画」は、もともと「ニコニコ静画」の中にあるためか、止まってしまってます。    他にも、はてな系の「カクヨム」や「魔法のiらんど」、角川アスキー総研系の「ASCII.jp」や「エリアLOVE WALKER」なども無事であることが確認できています。KADOKAWAグループのすべてが止まってしまっているわけではありません。早期復旧を祈念いたします。   関係性開示:ブックウォーカーには、HON.jpの法人会員として事業活動を賛助いただいています。しかし、本欄のコメント記述は筆者の自由意志であり、対価を伴ったものではありません。忖度もしていません。   【技術】   ◆ iPhone向け「iOS 18」発表、アップルのAI「Apple Intelligence」やアプリアイコンのカラーカスタマイズなど〈ケータイ Watch(2024年6月11日)〉 https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1598980.html    Appleの開発者向けイベント「WWDC24」では、今年もさまざまな発表がありました。いちばんの目玉は「Apple Intelligence」でしょう。ただ、Googleは開発者イベント「Google I/O」で120回も「AI」と言ったそうですが、逆にAppleは「WWDC24」で3回しか「AI」と言わなかったそうです。Appleとしては、端末を売るための要素の一つに過ぎない、ということでしょう。   ◇ AppleがAI/生成AI「Apple Intelligence」を発表、アプリ横断でオンデバイス/クラウドのハイブリッドAIに〈ケータイ Watch(2024年6月11日)〉 https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1598985.html    他社サービスとの比較で大きなポイントとなるのは、プライベートな情報へアクセスするため基本はオンデバイスで処理される点でしょう。勝手に学習しないと宣言しているとしても、クラウドで処理されるサービスに機微(センシティブ)情報を渡すのは躊躇われるところでしょうから。    まあ、まずは英語のみ対応とされているので、その実力の程を試す機会は当分先のことになりそうですが。   ◇ 「日経空間版」28日リリース 立体的な新UIを搭載したApple Vision Pro用ニュースアプリ〈ITmedia NEWS(2024年6月12日)〉 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2406/12/news122.html    そして、Apple Vision Proが日本語に対応し、日本でも予約が開始されています。約60万円。この日経のように、他にも何社か対応アプリを同時に発表していました。新聞みたいに面積の広いメディアのビューアと、相性は良さそうですね。   ◆ グーグル検索の上位表示の鍵になるかもしれない「エンティティ」とは?【SEO情報まとめ】 | 海外&国内SEO情報ウォッチ〈Web担当者Forum(2024年6月14日)〉 https://webtan.impress.co.jp/e/2024/06/14/47168    2ページ目にある「グーグルがインデックス可能なファイル形式にEPUBが追加された」という記述に目が留まりました。つまり、Googleはいままで、EPUBファイルをインデックスしていなかったわけです。ただ、EPUBファイルが検索に引っかかっても、ブラウザで開けるわけじゃないし……と思いつつ試してみたら、検索結果一覧からEPUBファイルがいきなりダウンロードできました。なるほど、そうなるか。    まあ、Googlebotがクロールできる場所へDRMフリーのEPUBファイルを公開しているケースは決して多くないでしょうから、現時点で影響はそれほど大きくないとは思います。記事で例示されている「白書」のように、官公庁系が無料配布しているものや、せいぜいサンプル程度でしょう。ちなみにHON.jp BooksではDRMフリーのサンプルEPUBを「Bibi」で閲覧可能な形にしています。 https://hon.jp/bibi/?book=sample2019.epub    また、EPUBファイルがダウンロードできても、ビューアが標準搭載されている環境が一部だけ(Apple系のデバイス)という問題にぶつかります。ただ、これをきっかけに、WindowsやAndroidにEPUBビューアを標準搭載すべしというユーザーの声が少しは高まるかも? いっそのこと、ChromeがEPUBビューアになればいいんですけどね。 よかったらこの記事をシェアしてください! Xでシェア Facebookでシェア Mastodonでシェア Blueskyでシェア 本稿は CC BY-NC-SA 4.0でライセンスされています。転送歓迎。ウェブなどへ転載する際は、HON.jp メールマガジンが出典であることを表記するのと同時に、HON.jp News Blogへのリンクを張っていただけると嬉しいです。 https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja NPO法人HON.jpは、本(HON)のつくり手をエンパワーする非営利団体です。「HON.jp News Blog」などのメディア事業、「HON.jp Books」などの出版事業、セミナー・カンファレンス・出版創作イベント「NovelJam」などのイベント事業を行っています。   事業収入だけでこれらの活動を継続するのは難しく、会費や寄付などみなさまのご支援が不可欠です。会員は随時募集中でさまざまな特典もご用意しています。さらなるご支援をお願いいたします。   ◆ 入会案内 https://www.aiajp.org/application ◆ 寄付のご案内 https://www.aiajp.org/donation ◆ 広告掲載のご案内 https://hon.jp/news/ad 発行人:NPO法人HON.jp 編集人:HON.jp News Blog編集長 鷹野凌 mail: honjp@aiajp.org 配信数:2586通 このメールマガジンは、HON.jp からのお知らせや、HON.jp News Blog 編集長 鷹野凌による「週刊ニュースまとめ&コラム」などを、原則、毎週月曜日の朝に配信しています。配信対象は、HON.jp News Blog から購読を申し込まれた方々と、これまで HON.jp とご縁があった方々です。   配信には Benchmark Email を利用しています。メール内のリンクはすべて bmetrack.com のサブドメインに自動変換されています。これは、Benchmark Email のシステムが開封率やクリック率などを計測しているためです。計測後、本来のURLへ自動転送されます。   不要な場合はお手数ですが、末尾の「配信停止」からお手続きください。 フォローして最新情報をチェック! 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