HON.jp メールマガジン #236 2023年7月3日版 Subject: HON.jp メールマガジン #236 2023年7月3日版 From: HON.jp編集部 Date: 2023/07/03 6:02 To: honjp@aiajp.org 📕 週刊出版ニュースまとめ&コラムやHON.jpからのお知らせなどをお届けします。 HON.jpロゴ HON.jp メールマガジン #236 2023年7月3日版 ISSN 2436-8245   1年の半分が終わりました。そろそろエアコンを点けていないと厳しい、暑い暑い季節がやってきます。部屋の中でパソコンがずっと稼働しているからか、外のほうが涼しいんですよね(鷹野) 【自社広告】 デジタル化の荒波を乗り越える道しるべに。年鑑「出版ニュースまとめ&コラム」の2016年版から2019年版まで刊行中です。詳細はこちら。 https://hon.jp/news/books 週刊出版ニュースまとめ&コラム #577(2023年6月25日~7月1日) 小学館  編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。同じ内容を HON.jp News Blog のウェブサイトでも公開していますので、TwitterやFacebookなどでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。 https://hon.jp/news/1.0/0/43442   【政治】   ◆ 「令和4年度 読書バリアフリー環境に向けた電子書籍市場の拡大等に関する調査」に関する報告書を公表しました〈METI/経済産業省(2023年6月23日)〉 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/2023dokubarireport.html    2021年から毎年恒例になっている調査報告です。目を通して少し気になったのが、問題意識が「生産(制作)」と「利用(読書)」に少し偏り過ぎていないか? という点。「流通(購入)」の段階、つまり電子書店・電子取次への調査が現状では行われていないようなんですよね。    名指ししちゃいますが、たとえば楽天Koboは商品詳細ページにリフロー型なのか固定型なのかを判別する情報がありません。リフロー型だと思って買ってみたら固定型だった、という経験を何度かしています。私の場合、読み上げの可不可ではなく、検索できないのが辛い。そういう表示をちゃんとしましょうよと行政から指導して欲しい。   ◆ 米FTC、独禁法違反でAmazon提訴か 米報道〈日本経済新聞(2023年6月30日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN29DQD0Z20C23A6000000/    先週はダークパターン規制での提訴というニュースをピックアップしましたが(#576)、こんどはマーケットプレイスがターゲットです。倉庫保管や配送をアマゾンに委ねるフルフィルメント by Amazon(FBA)を利用しているか否かで待遇に大きな差があるのでは、という疑いです。 https://hon.jp/news/1.0/0/43114    日本だと現状、e託販売サービスが新規取引を受け付けていないようなので、商品点数が少ない場合は「小口出品サービス」しか選択肢がありません。月額ゼロで利用できるので、正直、多少待遇に差があっても仕方ないとは思います。むしろ多少の差があって当然でしょう。    ただ、[カートに入れる]に優先表示されるのが新品より高い値付けをしている中古の販売店で、オンデマンドだから絶対に在庫を持っていないと断言できるような状況だったりすると、さすがにそれは販売店の待遇差以前に、ユーザーにとって良くないことではないか? と思うのですが。   ◆ NHK「政治マガジン」は必須業務? 総務省の有識者会議で話題〈朝日新聞デジタル(2023年6月30日)〉 https://www.asahi.com/articles/ASR6Z7DK5R6ZUCVL046.html    総務省の公共放送ワーキンググループで、NHKのネット配信を任意業務から本来(必須)業務に変更するのにあたって、テキスト記事の扱いをどうするのか? という点が論点になっています。以前、NHKの井上樹彦副会長がテキストニュースの縮小を示唆したというニュースをピックアップしましたが(#573)、このワーキンググループでも改めてNHKの方が同様の意向を示しているようです。 https://hon.jp/news/1.0/0/42383    要するに新聞社からの「民業圧迫」という批判に対し、テキストニュースの縮小という形で応えようとしているわけですが……そこを妥協点にしていいのだろうか。たとえば見逃し配信のNHKプラスと同様、契約がないとテキスト記事も読めない(そして過去記事は消さない)みたいな方向性は考えられないでしょうか?    余談ですが、会議での発言を記事に取り上げられた曽我部真裕氏が、コメントプラスに「何が論点なのか明確でない記事なので補足します」と投稿している点がインタラクティブで面白い。   ◆ 生成AIと著作権の論点整理へ 文化審議会著作権分科会の議論始まる〈朝日新聞デジタル(2023年6月30日)〉 https://www.asahi.com/articles/ASR6Z637BR6ZUCVL00R.html    文化庁からのお知らせを見落としていました……どのみち授業の時間と思いっきりぶつかっていて傍聴は無理でしたが。ああん、もう。配付資料はこちらです。法制度小委員会で生成AIと著作権に関する論点整理が、政策小委員会で海賊版対策などについて話し合われるようです。 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/bunkakai/68/index.html    生成AIの論点は、「権利者の利益を不当に害するのはどういう場合か」「事前学習に依拠性がどこまで認められるか」「AI利用者がどこまで関与していれば創作的寄与と認められるのか」などでしょうか。AI生成物が大量に出回ることで、裁判での「ありふれた表現」のレベルを底上げしていくかもしれないという意見もありました(#575)。法改正はないと思いますが、どのような整理が行われるか、要注目です。 https://hon.jp/news/1.0/0/43002   【社会】   ◆ 漫画のエロ・グロ表現で犯罪が起こる? 「はじめの一歩」作者の憂い〈毎日新聞(2023年6月29日)〉 https://mainichi.jp/articles/20230628/k00/00m/040/264000c    毎日新聞が、有害図書規制のあり方を問う大がかりな特集を組んでいます。こちらは漫画家・森川ジョージ氏へのインタビュー、全3回です。今後の予定には赤松健氏、志田陽子氏、栗下善行氏、白田秀彰氏、里中満智子氏の名前が並んでいます。表現規制に反対する声が中心になりそうですね。善哉。   ◆ KADOKAWA、「ギフテッド」への誤解招く表現で謝罪 該当の児童書を発売延期 「ネット上での先行連載は削除」〈ねとらぼ(2023年6月30日)〉 https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2306/30/news189.html    その表現が問題視されてしまうのか……とちょっと驚いた事件。改めて辞書を調べてみましたが、私が持っている国語辞典にはいずれも記載なし。英語の“gifted”は「天分のある,優れた才能[資質のある],〈才能などに〉恵まれている」(オーレックス)でした。    ところが、どうもカタカナの「ギフテッド」には、異なるニュアンスが込められるようになっているようなんですね。謝罪文に「『天才』と誤解されることもありますが」とあるように、「ギフテッド」を「天才」とイコールで結んではならない風潮がある、と。私も認識不足でした。    とくに子供向けレーベルということもあって、発売延期・ウェブ連載も削除という対応になったようです。お蔵入りではなく、刊行を目指して見直しを図るとされているのが幸いか。   【経済】   ◆ 「今のTwitterは悪い意味で“ヤバい”」青バッジを剥奪された私がそれでも「月額980円」を払う理由 《『SPY×FAMILY』の作者も困惑》〈文春オンライン(2023年6月26日)〉 https://bunshun.jp/articles/-/63863    まつもとあつし氏によるTwitter批判。結びの言葉が「Twitterの力は依然として巨大だが、メディアとしてはゆるやかに死に向かうフェーズに入っていると言えるだろう」なのですが、その後、さらに次々と“ヤバい”ことが起きていて、死に向かう速度を増している感があります。   ◇ Twitter、ログインしないと何も表示できない状態に 「一時的な緊急措置」とマスク氏〈ITmedia NEWS(2023年7月1日)〉 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2307/01/news055.html   ◇ Twitterに厳しい一時制限 未認証アカの閲覧件数は「1日600件まで」── 「Twitter終わり」「API規制」トレンドに【更新:1日1000件に緩和】〈ITmedia NEWS(2023年7月2日)〉 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2307/02/news034.html   ◇ Twitter障害はスクレイピングではなく“自己DDoS”が原因?〈ITmedia NEWS(2023年7月2日)〉 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2307/02/news036.html    個人的には、4月上旬のAPI停止の時点で見限って、新規投稿は止め、閲覧だけのアクセス頻度も下がっていました。だから今回の騒動は、すでに高みの見物状態です。しかし、マーケティングに活用していた方々にとっては本気で困る状態でしょう。閲覧件数の制限って、わりと致命的なのでは。    代替手段と言われているSNSには避難民が殺到しているようですが、広告出稿する手段がなかったり、ユーザー層の違いから広告効果が見込めなかったり。そしてこの絶好のタイミングに、Twitter対抗の本命と目されているMetaの「Threads」がまだリリースされていないという。   ◆ はてなブログで記事の有料販売が可能に! 新機能「記事の有料販売」をリリースしました〈週刊はてなブログ(2023年6月28日)〉 https://blog.hatenablog.com/entry/selling    はてな独自開発の新機能ではなく、WordPressなどでもすでに利用可能だった「codoc(コードク)」との連携です。私は、個人ブログにはすでに導入済みですが、投げ銭のみの利用で、有料記事の配信には至っていない状態でした。 https://codoc.jp/    これではてなブログは、noteと真正面からぶつかることに。まあ、ライバルの存在は、利用者にとっては良いことですね。サービス競争が起きますから。切磋琢磨していただければと思います。   ◇ お金を払ってコンテンツを消費すること〈やしお(2023年6月28日)〉 https://yashio.hatenablog.com/entry/htncdc    このリリースのタイミングで「プロモーションのため、はてなからの依頼を受けて投稿」というエントリーが複数出ていました。中でもこのやしお氏の論考は、以前私がnoteで倉下忠憲氏とのコラボで連載していた(そして私のターンで止めてしまった)「コラボしようぜで始まったけどまだ中身も決まっていない本の連載」に通じるものがあり、刺激的でした。最後に「残り:6文字」が有料になっている点にもニヤリ。投げ銭のつもりで購入しました。どういたしましてー。 https://note.com/rashita/m/m8a7e2031bbea   【技術】   ◆ 上原亜衣がAI写真集を出版。元トップセクシー女優が挑む“AI革命”〈日刊SPA!(2023年6月28日)〉 https://nikkan-spa.jp/1922747    著名人のLoRA(Low-Rank Adaptation:生成AIを低コストで追加学習できる手法)モデルが勝手に作られ配付されているような状況もある中、自身のモデルを作成・配付し、AI画像コンテストを開催、写真集まで出版するという見事な活用っぷりです。恐れいりました。技術そのものには善も悪もなく、結局は使う人次第なのですよね。   ◆ 生成AIで広告収入目的のゴミサイトが急増、1日1200本更新も〈MIT Tech Review(2023年6月28日)〉 https://www.technologyreview.jp/s/310948/junk-websites-filled-with-ai-generated-text-are-pulling-in-money-from-programmatic-ads/    こちらは悪用事例。広告収入だけを目的とした、いわゆる「コンテンツ・ファーム」です。予想はしていましたが、すでに猛烈な勢いで記事が量産されている模様。人間によるチェックがまったく入っていないようで、「プロンプトの指示を実行できません」といった生成AIのエラーメッセージがそのまま残っているような記事もあるとか。雑ぅ……。    そういうゴミ記事が検索結果の上位に入ってこなければ、ただの徒労で済むんでしょうけどね。Google検索のアルゴリズムがどこまで排除できるか、真価が問われることになりそうです。   ◇ 集英社も取り下げた「AIグラビア」の問題点〈ASCII.jp(2023年6月26日)〉 https://ascii.jp/elem/000/004/142/4142420/    前述のLoRAモデル問題と、コンテンツ・ファーム問題の、両方に関係する話題。2ページ目に、アマゾンでAIグラビア写真集が大量に販売されていることに触れられています。既に3000〜4000点に及んでいて、ほとんどが「Kindle Unlimited(KU)」対応とのこと。    実際のところ、「タレント写真集の売れ筋ランキング」を見ると、タイトルに「AI美女」とか「AIグラビア」とある作品がけっこう上位に入っているんですよね。ランキング上位に入るってことは、読まれているということ。KUは読まれたページ数に応じて収益分配されますから、AI生成画像でけっこう稼げちゃってることに。マジか。 https://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/digital-text/2291790051   ◇ AI-Generated Books of Nonsense Are All Over Amazon's Bestseller Lists〈VICE(2023年6月29日)〉 https://www.vice.com/en/article/v7b774/ai-generated-books-of-nonsense-are-all-over-amazons-bestseller-lists    そして本国アメリカでは、写真集ではなく「ティーンおよびヤングアダルトの現代ロマンス電子書籍」のランキングで、AI生成作品がランキングの上位を埋め尽くすような状態に陥っているという報道がありました。    パッと見でだましやすく消費しやすい写真集やイラストならともかく、わざわざ好き好んで大量生産のゴミテキストを読み続ける人がそんなにいるのか? という疑問が。何かしらの手段でランキングハックもやってるんじゃないかしら。「読まれた」判定のハッキングで稼いでいた輩がいた(そして誤BAN祭りにまで発展した)のを思い出します。   よかったらこの記事をSNSでシェアしてください! Twitterでシェア Facebookでシェア Mastodonでシェア 本稿は CC BY-NC-SA 4.0でライセンスされています。転送歓迎。ウェブなどへ転載する際は、HON.jp メールマガジンが出典であることを表記するのと同時に、HON.jp News Blogへのリンクを張っていただけると嬉しいです。 https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja 会員申込みや寄付などについて  NPO法人HON.jpは、本(HON)のつくり手をエンパワーするため、ウェブメディア「HON.jp News Blog」やメールマガジンなどのメディア事業、出版創作イベント「NovelJam」の開催やセミナー・講習会などのイベント事業、出版事業などを行っています。  当法人の事業活動は、みなさまのご支援のおかげで継続できています。いつもありがとうございます。正会員・賛助会員(個人/法人)は随時募集しており、さまざまな特典もご用意しています。また、寄付も受け付けています。さらなるご支援をよろしくお願いいたします。   ■ NPO法人HON.jp正会員のご案内 https://www.aiajp.org/application/regular-member   ■ NPO法人HON.jp賛助会員のご案内 https://hon.jp/news/supporter   ■ NPO法人HON.jpへの寄付受付窓口(Syncable) https://syncable.biz/associate/honjp/donate/   ■ 読み終えた本で寄付ができる「チャリボン」 https://www.charibon.jp/partner/hon-jp/ 広告掲載のご案内  HON.jp News Blogは、これからも本(HON)を作ろうとしている人々に、国内外の事例を紹介し、デジタルパブリッシングを含めた技術を提供し、意見を交換し、仮説を立て、新たな出版へ踏み出す力を与えるメディアです。運営は、NPO法人HON.jp メディア部会が行っています。このメディアへの広告掲載は、随時募集しています。当メルマガへの広告掲載も可能です。詳しくは下記のリンク先をご覧ください。 ■ 広告掲載のご案内 https://hon.jp/news/ad 発行人:NPO法人HON.jp 編集人:HON.jp News Blog編集長 鷹野凌 mail: honjp@aiajp.org 配信数:2584通 このメールマガジンは、HON.jp からのお知らせや、HON.jp News Blog 編集長 鷹野凌による「週刊ニュースまとめ&コラム」などを、原則、毎週月曜日の朝に配信しています。配信対象は、HON.jp News Blog から購読を申し込まれた方々と、これまで HON.jp とご縁があった方々です。   配信には Benchmark Email を利用しています。メール内のリンクはすべて bmetrack.com のサブドメインに自動変換されています。これは、Benchmark Email のシステムが開封率やクリック率などを計測しているためです。計測後、本来のURLへ自動転送されます。   不要な場合はお手数ですが、末尾の「配信停止」からお手続きください。 フォローして最新情報をチェック! 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