HON.jp メールマガジン #230 2023年5月22日版 Subject: HON.jp メールマガジン #230 2023年5月22日版 From: HON.jp編集部 Date: 2023/05/22 6:02 To: honjp@aiajp.org 📕 週刊出版ニュースまとめ&コラムやHON.jpからのお知らせなどをお届けします。 HON.jpロゴ HON.jp メールマガジン #230 2023年5月22日版 ISSN 2436-8245  昔から、なにかに没頭していて気付いたら外が真っ暗、という経験がよくありました。ところが最近は、それほど没頭してないのに時が経つのが早い、と感じるようになってきました。いわゆる「ジャネーの法則」というやつでしょうか。光陰矢のごとし。あっというまに月日が過ぎていきます(鷹野) 【自社広告】 デジタル化の荒波を乗り越える道しるべに。年鑑「出版ニュースまとめ&コラム」の2016年版から2019年版まで刊行中です。詳細はこちら。 https://hon.jp/news/books 週刊出版ニュースまとめ&コラム #571(2023年5月14日~20日) TSUTAYA三鷹北口店  編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。同じ内容を HON.jp News Blog のウェブサイトでも公開していますので、TwitterやFacebookなどでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。 https://hon.jp/news/1.0/0/42072 【政治】   ◆ <独自>文化庁、漫画海賊版サイトを半年以上〝紹介〟URL公開〈産経ニュース(2023年5月16日)〉 https://www.sankei.com/article/20230516-MEHDOEVAR5NM3O44HQZX25FKJE/    文化庁の公式サイトで公開されていた著作権に関する講習会の資料で、黒塗りにされていた海賊版サイトの名称とURLが、マウスカーソルを合わせるとリンク先が表示され、クリックするとアクセス可能な状態になっていたとのこと。黒い図形を上から被せただけの処理で、AcrobatなどPDFが編集可能なソフトで剥がされてしまう事例は以前からよくありましたが、恐らくこれはセルを黒くしただけだったのでしょう。印刷後にスキャンするとか、PDFではなく画像で出力なら防げたかもしれませんが、こんどはアクセシビリティの問題になってしまいます。見せたくない情報はブランクにする(消す)のが正しい対処でしょう。   ◆ 著作権法どう改正 権利者不明デジタル作品、使いやすく〈日本経済新聞(2023年5月17日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE126KX0S3A510C2000000/    文化審議会で議論が続けられてきた「簡素で一元的な権利処理方策」です。新たに「未管理著作物裁定」制度の創設が確定しました。これ、従来の文化庁長官による裁定制度の改善ではないのですよね。別制度。しかし、昨年末の審議では「時限的でない利用を可能とする仕組みについては、裁定制度を活用した方策とする」と整理されていたはずなのですが、記事には「利用期間の上限は3年だが、再申請で更新することができる」とありますね……裁定制度への切替のことを言ってるのかな? https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r04_08/    あと、今後の検討課題について。記事にはデータベース構築と権利者への丁寧な周知が挙げられていますが、他にも、なにをもって「利用の可否に関する著作権者等の意思」表示とするか? 問題があります。以前にも書きましたが(#562)、例えば出版物の奥付などにある定型的な「禁無断転載」といった表示だけで意思表示とみなすべきではない、という問題提起があり、報告書には「過去の時点での利用の可否が示されているものの、現在市場に流通していないなどにより現在の意思が確認できない場合の扱いについては、実態等を踏まえて引き続き今後の検討課題とする」と記されています。 https://hon.jp/news/1.0/0/39789    古い本を電子版で復刻しようと思ったとき、著作者(や著作権継承者)には連絡が付いてOKも出ているのに、出版社に連絡を無視されるという話を聞きます。在庫がまだあるのかどうかすら明かさない、都合が悪いことは無視、みたいな。そういうケースはもう「意思表示なし」で良いのではないかと思うのですよね。   ◆ 公取委、インボイス制度で発注元を注意 「独禁法違反のおそれ」〈朝日新聞デジタル(2023年5月17日)〉 https://www.asahi.com/articles/ASR5K5RSXR5KUTFK00X.html    以前からお伝えしてきたように、免税事業者に対し消費税分を差し引いた価格で納めるよう要求すると「優越的地位の濫用」にあたる可能性があります。施行前のこのタイミングで、公正取引委員会が実際に発注元への注意を行った事例が、名前を伏せた形で公開されました。公取委の資料はこちら。 https://www.jftc.go.jp/file/invoice_chuijirei.pdf    注意対象の業態と取引の相手方は、「イラスト制作業者」と「イラストレーター」、「農産物加工品製造販売業者」と「農家」、「ハンドメイドショップ運営事業者」と「ハンドメイド作家」、「人材派遣業者」と「翻訳者・通訳者」、「電子漫画配信取次サービス業者」と「漫画作家」とあります。    以前、佐藤秀峰氏の電子取次サービス「電書バト」が公取委から聞き取り調査と資料の提出を求められたというエントリーをピックアップしましたが(#568)、他にもすでにいろいろ事例があるのですね。公正取引委員会がしっかり動いております。たのもしい。 https://hon.jp/news/1.0/0/41587    しかしこうなると次は恐らく、何かしら別の理由をつけて取引そのものを断るような方向になると思うんですよ。免税事業者だからと断るのではなく、たとえば初めから法人格を必須とするとか(世の中には個人はお断りという企業も多い)。まあ、クリエイターを相手にする商売だと、難しいとは思うのですが。   ◆ 新聞協会、「生成AI」に懸念 記事の無断利用、政府に対応要請〈共同通信(2023年5月17日)〉 https://nordot.app/1031466894312752017    日本新聞協会が生成AIについて、政府に対応を要請する声明を発表しています。とくに気になったのは「現行著作権法や法改正に至る過程の問題点」について。2018年改正のいわゆる「柔軟な権利制限規定」の審議過程で、「AIが新たな表現物を生成して権利者を脅かす恐れのあることが政府から示されたことはなかった」と主張しています。 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/    これについては、読売新聞も「政府、法改正議論時にAIの著作権リスク説明せず…先進国で最も緩い法規制の枠組みに」という記事で、2018年改正当時の経緯を伝えています。「当時は生成AIの出現を想定した説明は行われなかった」と。ただ、当時の委員も「予想よりもだいぶ早かった」とは言ってますが、急速な発展が想定外だっただけで、出現そのものが想定外とは言ってないような。 https://www.yomiuri.co.jp/national/20230516-OYT1T50023/    ちなみに、2016年1月に内閣官房 知的財産戦略推進事務局から公表された「AIによって生み出される創作物の取扱い(討議用)」という資料には、すでに「コンピューターから、人間の創作物と見分けのつかない情報が生成される状況になりつつある」と書かれています。想定されてるどころか、当時からすでにそういう状況だったのでは。 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2016/jisedai_tizai/dai4/siryou2.pdf    まあ、当時どうだった云々の話はともかく、読売新聞記事で牧野和夫弁護士も言ってるように、やはり30条の4の但し書き「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当するケースをもっと具体的かつ詳細に示して欲しい、とは私も思います。いまのところ文化庁から出ているのは、データベースの著作物についてくらいでしょうか(問9)。冒頭に「本資料は,実際に行われるサービスの状況や,事例の蓄積の状況等を踏まえつつ定期的に内容を更新していくことを予定している」と記してあるのに、更新されてないわけですよ。 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/pdf/r1406693_17.pdf   ◆ NHKのネット業務の位置づけ巡る議論 新聞協会、結論ありきと批判〈朝日新聞デジタル(2023年5月19日)〉 https://www.asahi.com/articles/ASR5M6RX5R5MUCVL01M.html    こちらも日本新聞協会。NHKのネット業務を「任意」から「必須」に格上げするかどうかについて審議しているワーキンググループに対し、意見と質問が投げかけられています。やはり「NHK NEWS WEB」「NHK政治マガジン」など、テキストベースの記事も問題視されているようです。年鑑「出版ニュースまとめ&コラム」を編集していると、NHKの過去記事がほとんど消えていることに切なくなります。必須業務になれば、消えなくなるのかなあ。   ◆ スマホOS企業に事前規制新法 巨大ITの自社優遇防止〈共同通信(2023年5月19日)〉 https://nordot.app/1032233158840255454    AppleとGoogle狙い撃ちの規制法が最終調整段階に。デジタル市場競争会議ワーキンググループによるGoogleへのヒアリングはこちら。Appleへのヒアリングはこちら。OSやブラウザなどの突然の仕様変更、Webkitの利用義務付け、アプリストアの決済システム利用義務付け、プリインストールアプリやデフォルト設定、検索サービスを利用した自社サービスの優遇など、かなりの広範囲がヒアリングの対象となっています。2社寡占状態による弊害がどこまで是正できるか注目です。 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/kyosokaigi_wg/dai47/index.html https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/kyosokaigi_wg/dai48/index.html   【社会】   ◆ Google、画像の信頼性を確かめるためのAbout this image機能をリリース〈海外SEO情報ブログ(2023年5月16日)〉 https://www.suzukikenichi.com/blog/google-will-release-about-this-image/    ブログやSNSが流行り始めたころから、無断転載された画像の著作者や初出(最初にウェブで公開された場所)を調べるのは非常に困難でした。Googleならそういう情報を持っているはずなのに……と歯がゆい思いをしていましたが、やっとこういう機能が出てきました。誰でも簡単に検証できるようになれば、抑止効果が働くはず。著作者名の詐称などもすぐバレるでしょう。いまのところアメリカのみですが、はやく全世界に展開して欲しい。   【経済】   ◆ 【重要】印税率変更のお知らせ(2023/5/15実施)〈アルファポリス(2023年5月15日)〉 https://www.alphapolis.co.jp/pages/topic_20230515    従来は、販売部数が1万部以下のときは印税率が低いうえ実売印税という、正直かなりシビアな条件でした。今後は原則として販売部数にかかわらず10%になるとのこと。小説投稿サイトの競合も増えてきて、このままだとクリエイター獲得競争に負けてしまう、という判断があったのでしょうか? いずれにしても、こうやって条件や契約書の文言まであらかじめ公開しているというのは、フェアな取引ではあると思います。   ◆ Twitter Blue に価値はあるのか? 有色人種クリエイターからは疑問の声〈DIGIDAY[日本版](2023年5月17日)〉 https://digiday.jp/platforms/content-creators-of-color-question-whether-twitter-blue-is-worth-the-price-after-elon-musks-takeover/    タイトルには「有色人種クリエイター」からの疑問とありますが、Twitter Blueに関してはシンプルに効果があるかどうかで考えたほうがよさそう。Twitter Blueの導入直後に加入したけど「日々のツイートの閲覧数が増えていないことに気づき、ほどなく解約した」という事例が紹介されていますが、重要なのは、解約した後に閲覧数が減ったかどうかでしょう。残念ながらこの記事ではそこまで追っていません。    Twitter Blueを契約すると露出が増えるアルゴリズムなので、シンプルに考えれば、契約者の露出が増えたぶん、未契約者の露出が減ることになります。しかし、閲覧数の絶対値が以前とあまり変わらないなら、相対的な露出は増えているけどTwitter全体の閲覧数が減っている可能性があります。だから、解約すると閲覧数が減るのではないか? と。    問題は、Twitterアナリティクスで、1年以上前のツイートインプレッションが参照できない点。過去の実績と比較検証ができないんですよ。私の記憶が確かなら、タイムラインのアルゴリズム操作が顕著になった2022年3月くらいから、私が管理しているアカウントのツイートインプレッションは激減していたはず。しかし、もう振り返ることはできません。都合が悪いから隠した、と考えるのが自然でしょう。    HON.jp News Blog公式アカウントは運用をまったく変えていないので検証しやすいのですが、以前のツイートインプレッションは月間100万は超えていました。それがいまでは20~30万くらいになっています。じゃあ、Twitter Blue契約するとどれくらい戻るのか。テストしてみたい気はします。   【技術】   ◆ &DC3の電子書籍ビューア「CLIP STUDIO READER」がバージョンアップ テキストコンテンツの読み上げ機能や全文検索機能などを実装し、アクセシビリティが向上〈株式会社&DC3のプレスリリース(2023年5月18日)〉 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000120551.html    セルシスのEPUBビューア「CLIP STUDIO READER」(いまは子会社&DC3の管掌)がバージョンアップし、読み上げ機能などアクセシビリティ対応が向上しています。実は以前、試しに使わせていただいた際に「将来的にご対応いただけたらうれしい」と要望を伝えていたので、非常にうれしく思いピックアップさせてもらいました。    次はページナビゲーションにもご対応いただけたら……ちょうど先日開催された日本出版学会 春季研究発表会ワークショップ「アクセシブルなEPUB出版物の制作における課題――日本出版学会学会誌を事例にして」で話題にしたばかりです。YouTubeに映像を公開しましたので、ご参考まで。 https://www.youtube.com/watch?v=QKtqOvF5oKs   よかったらこの記事をSNSでシェアしてください! Twitterでシェア Facebookでシェア Mastodonでシェア 本稿は CC BY-NC-SA 4.0でライセンスされています。転送歓迎。ウェブなどへ転載する際は、HON.jp メールマガジンが出典であることを表記するのと同時に、HON.jp News Blogへのリンクを張っていただけると嬉しいです。 https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja 会員申込みや寄付などについて  NPO法人HON.jpは、本(HON)のつくり手をエンパワーするため、ウェブメディア「HON.jp News Blog」やメールマガジンなどのメディア事業、出版創作イベント「NovelJam」の開催やセミナー・講習会などのイベント事業、出版事業などを行っています。  当法人の事業活動は、みなさまのご支援のおかげで継続できています。いつもありがとうございます。正会員・賛助会員(個人/法人)は随時募集しており、さまざまな特典もご用意しています。また、寄付も受け付けています。さらなるご支援をよろしくお願いいたします。   ■ NPO法人HON.jp正会員のご案内 https://www.aiajp.org/application/regular-member   ■ NPO法人HON.jp賛助会員のご案内 https://hon.jp/news/supporter   ■ NPO法人HON.jpへの寄付受付窓口(Syncable) https://syncable.biz/associate/honjp/donate/   ■ 読み終えた本で寄付ができる「チャリボン」 https://www.charibon.jp/partner/hon-jp/ 広告掲載のご案内  HON.jp News Blogは、これからも本(HON)を作ろうとしている人々に、国内外の事例を紹介し、デジタルパブリッシングを含めた技術を提供し、意見を交換し、仮説を立て、新たな出版へ踏み出す力を与えるメディアです。運営は、NPO法人HON.jp メディア部会が行っています。このメディアへの広告掲載は、随時募集しています。当メルマガへの広告掲載も可能です。詳しくは下記のリンク先をご覧ください。 ■ 広告掲載のご案内 https://hon.jp/news/ad 発行人:NPO法人HON.jp 編集人:HON.jp News Blog編集長 鷹野凌 mail: honjp@aiajp.org 配信数:2581通 このメールマガジンは、HON.jp からのお知らせや、HON.jp News Blog 編集長 鷹野凌による「週刊ニュースまとめ&コラム」などを、原則、毎週月曜日の朝に配信しています。配信対象は、HON.jp News Blog から購読を申し込まれた方々と、これまで HON.jp とご縁があった方々です。   配信には Benchmark Email を利用しています。メール内のリンクはすべて bmetrack.com のサブドメインに自動変換されています。これは、Benchmark Email のシステムが開封率やクリック率などを計測しているためです。計測後、本来のURLへ自動転送されます。   不要な場合はお手数ですが、末尾の「配信停止」からお手続きください。 フォローして最新情報をチェック! 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