Subject: HON.jp メールマガジン #202 2022年10月24日版 From: HON.jp編集部 Date: 2022/10/24 6:02 To: honjp@aiajp.org 📕 週刊出版ニュースまとめ&コラムやHON.jpからのお知らせなどをお届けします。 HON.jpロゴ HON.jp メールマガジン #202 2022年10月24日版 ISSN 2436-8245  散歩をしていたら、またキンモクセイが香っていました。あれ? 先月の末にも開花してたよな? と思ったら、二度咲きというのがあるのですね。知りませんでした(鷹野) 【自社広告】 あなたが読み終えた本を、本(HON)のつくり手をエンパワーメントする活動の力にできます。古本で寄付する仕組み「チャリボン」をぜひご活用ください。 https://www.charibon.jp/partner/hon-jp/ 週刊出版ニュースまとめ&コラム #543(2022年10月16日~22日) 永森書店、荒魂書店、知道出版  編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。同じ内容を HON.jp News Blog のウェブサイトでも公開していますので、TwitterやFacebookなどでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。 https://hon.jp/news/1.0/0/37268 【政治】 ◆ 「いいね」で賠償命じる初判断、原告代理人は「特定の事例における特定の判断」と強調〈弁護士ドットコム(2022年10月20日)〉 https://www.bengo4.com/c_18/n_15145/  Twitterの「いいね」に不法行為を認めた判決は初めてとみられるそうです。ただ、これは自民党杉田水脈衆院議員とジャーナリスト伊藤詩織さんとの関係やこれまでの経緯が考慮された上での判断で、悪口に「いいね」をしたら即不法行為などと一般化できるわけではないようです。中澤佑一弁護士の解説によると、フォロワー数の多さや、国会議員という影響力も認定されているとのこと。かなり特殊な事例と考えてよさそうですね。 https://www.bengo4.com/c_18/n_15149/ ◆ インボイス制度に賛成の個人事業主は4%。freee調査〈Impress Watch(2022年10月20日)〉 https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1449267.html  免税事業者には「課税売上高が1000万円以下」という条件があるいっぽう、売上高1000万円を超えたら法人成りしたほうがよいと言われています。つまり現状「個人事業主」は、ほぼ免税事業者であると考えてよさそうです。それなのに、インボイス制度に賛成が4%もいることに驚きです。なぜ賛成できるんだろう?  売上高1000万円以下でも課税事業者になれば、消費税を納める必要があります。免税事業者のままでいれば、仕入税額控除できないぶんは取引先に損をさせます。つまり「消費税のババ抜き」状態です。だから少なくとも、個人事業主にとってはプラスになる制度でないことは間違いないのですが。 【社会】 ※デジタル出版論の連載はお休みしました。 ◆ Yahoo!ニュース、11月中旬からコメント投稿において携帯電話番号の設定を必須に〈ケータイ Watch(2022年10月18日)〉 https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1448423.html  誹謗中傷など不適切な投稿に対する新たな対応です。携帯電話の番号をキーとし、過去に投稿停止措置を受けたアカウントを特定することで抑止を図るそうです。匿名性がぐっと下がるので、発信者情報開示請求以降の流れもスムーズになりそう。一定程度の抑止効果はあるでしょう。  ただ、過去の事例を振り返ると、根本的な解決に繫がるかは疑問です。韓国で「インターネット実名制」を導入しても悪質な書き込みが減らなかった、とか、実名性が基本のFacebookでも誹謗中傷上等で暴れ回ってる人はウヨウヨしている、とか。 https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/security/398483.html ◆ 早慶和書電子化推進コンソーシアム、早稲田大学と慶應義塾大学の学生・教職員向けの電子書籍プロジェクトを開始:電子書籍1,200点以上を期間限定で提供〈カレントアウェアネス・ポータル(2022年10月20日)〉 https://current.ndl.go.jp/node/47025  プレスリリースを見ると「大学図書館が購入可能な和書の電子書籍タイトルが少ない」とか「購読モデルの選択肢が限られている」といった課題が挙げられています。つまり大学図書館、学術書の領域でも「売ってなきゃ買えない」が問題視されるようになってきた、ということでしょう。言い続けた甲斐があったかも?  実はたまたま先日、私立大学図書館協会東地区部会の「電子ブックの活用を考える」というテーマの研修会に登壇して「デジタル出版市場の現状と流通事情について」というテーマでお話しする機会がありました。 https://www.jaspul.org/east/collegium/index.html  質疑応答では、やはり「和書の電子書籍タイトルはどうしたら増えるか?」「そのために大学図書館がやれることはなにか?」といった趣旨のご質問が寄せられました。結局、出版もビジネスですから「儲かる」となれば目の色が変わります(実際マンガはそうなった)。だから、どんどん学生に使ってもらって「ニーズがある」ことを出版社に実感させて欲しい、と伝えておきました。  まあ、学術書なんて「儲ける」ためにやってるわけじゃないでしょうけど。でも、オフセット印刷で数千単位の在庫を抱えるより、オンデマンド出版&電子書籍のほうがリスクは少ないと思うのですよね。 【経済】 ◆ 日本初!国内クリエイターエコノミー調査結果を発表〈一般社団法人クリエイターエコノミー協会(2022年10月17日)〉 https://creator-economy.jp/n/n5c6bd45a6d87  国内クリエイターエコノミーの市場規模が1兆3574億円と推計されています。ちょうど最近「出版統計に出てこない領域」について話をする機会が複数あったので、タイムリーでした。ただ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの資料「【図表2】各プラットフォーム・サービスの代表的な企業・サービス例」(下図)を見たところ、KDPなど電子書籍・電子マンガのセルフ・パブリッシングが含まれていないように見えます。あれ? (※出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)  あくまで「代表的な企業・サービス例」だからなあ……と、念のため三菱UFJリサーチ&コンサルティングに問い合わせてみました。すると「電子書籍・電子マンガのセルフ・パブリッシングも含まれる」という回答が得られました。図表3(クリエイターエコノミーの市場規模算出の考え方)の細分類「コンテンツ販売:文章・イラスト等」に該当するそうです。ホッ。  ただ、たとえば「日本におけるKDP売上」なんて数字を秘密主義のAmazonが出すとは思えないのですが、どうやって推計しているんだろう? という新たな疑問が。「Kindleインディーズマンガ」の基金は毎月の分配額が明らかにされてますが、それ以外、KDPのアラカルト販売や「Kindle Unlimited」で読まれたぶんの分配額などは、難しいと思うんですよね。 ◆ 新聞社総売上高は1兆4690億円 2021年度の新聞経営関係調査まとまる〈文化通信デジタル(2022年10月17日)〉 https://www.bunkanews.jp/article/293460/  上記の国内クリエイターエコノミー市場規模と比較すると、ほぼ匹敵する数字になってしまっていることがわかります。さらに、有料会員限定部分には、デジタル関連事業売上比率の総平均(スポーツ紙除く)が載っていました。なんとたったの2.297%というのですから驚きです。  マンガが牽引しているとはいえ、デジタル売上比率は出版業界のほうが新聞業界よりずっと高いのです。デジタル化とネットワーク化の波が押し寄せ始めてから四半世紀以上経つというのに、新聞社はいままでなにをやっていたんだろう? 恐らく、戸別配達のインフラが強すぎてシフトできなかった、ということなのでしょうけど。 ◆ 9月の消費者物価3.0%上昇 31年ぶり、円安進行と資源高で〈共同通信(2022年10月21日)〉 https://nordot.app/955974166766977024?c=491375730748638305  円安がどんどん進行しています。本校執筆前夜には一時1ドル151円94銭まで下落し、その後日銀の為替介入があったのか、数時間で144円台まで急騰するという乱高下が起きていました。2021年の平均相場は1ドル約110円だったのに……輸入品目の高騰がヤバイ。これ、対ドルだけでなく、対ユーロでもそこそこ円安傾向なんですよね。1年前は1ユーロ132円台だったのが、いまは145円台ですから。 ◇ 円安とドル高 為替の学びへの影響は深刻化するばかり | News Up | 物価高騰〈NHK(2022年10月21日)〉 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221021/k10013865721000.html  円安は出版関連の領域にも影響を及ぼしています。少し前に紙の価格が高騰というニュースがありましたが、洋書や電子ジャーナルの価格にも反映され始めているようです。ただ、逆に輸出品目は価格競争力が増して有利になっているわけで。エンタメ系など海外展開が期待されているコンテンツ産業にとっては、悪いことばかりではない、という考え方もできると思います。 【技術】 ◆ 「Midjourney」などのAIはクリエイターの仕事を奪うのか? 国立情報学研究所教授に聞いてみた〈Real Sound|リアルサウンド テック(2022年10月16日)〉 https://realsound.jp/tech/2022/10/post-1151940.html  ちょうど先週、デジタル編集論の講義が「Google」の回でした。彼らが検索技術向上のためになにをやっているか? という話の流れで、必然的に、AIについても触れることになります。そして、近未来になにが起きるか? という観点で、野村総研が2015年に出した「10~20年で日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」というレポートを紹介しています。 https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf  このレポートでは、代替可能性の低い職業としてクリエイター系が多く挙げられています。ところが、最近の画像生成AIの進化を見ると、どうもそれは違うのではないか? という意見が強くなっているように思います。この記事は、以前から「むしろクリエイティブ系の仕事こそ(AIに)代替されやすい」と主張してきた国立情報学研究所の山田誠二教授へのインタビューです。活路はどこにあるのか? いろいろ考えさせられます。 ◆ 校正機能「Microsoft エディター」がAIでさらに強化 ~表現を柔らかくしたり、要約を作成することも〈窓の杜(2022年10月17日)〉 https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1448053.html  #542でピックアップしたAI画像生成の「Microsoft Designer」に続き、AI校正のサービス展開も始まるようです。まあ、英語からでしょうけど。Microsoft公式で配信している日本語ドキュメントは、恐らく自動翻訳そのままと思われる酷い文章を垂れ流していますので、日本語向けサービスには正直あまり期待できないのですが。先にお前の出してる文章を直せと言いたくなります。 https://hon.jp/news/1.0/0/37190 ◆ 画像生成AI、数十秒でプロ顔負け 著作権は誰のもの?人間の価値は〈朝日新聞デジタル(2022年10月18日)〉 https://www.asahi.com/articles/ASQBK5K3WQBDUCVL01P.html  朝日新聞による画像生成AIについての現時点でのまとめ。有料会員限定部分で、STORIA法律事務所の柿沼太一弁護士が「AI生成画像に著作権がないと思い込むのは危険」とコメントしています。#536で紹介した記事と同様、「長い呪文」や「画像の選択」により著作権が発生しうる、というものです。 https://hon.jp/news/1.0/0/36883  そこで、ちょっと思考実験をしてみました。AI生成の画像作品を発表したAさんが、それを無断で利用したBさんを著作権侵害で訴え、Bさんが「AI生成物は著作物ではない」と主張して裁判になったとします。このケースで、Aさんはどういう主張をしたら認められるか? Bさんはどう反論すればよいのか?  まず「長い呪文」について。Bさんは、ただ単に呪文が長ければ著作物というわけではなく、そこには「創作的寄与」が必要だと主張するでしょう。私の知る限り、画像生成AIの呪文=プロンプトは、単語やフレーズをカンマ区切りで羅列した「コマンド」みたいなもの。それがAさんの「思想または感情の創作的表現」と裁判で認められるかどうか。  次に「画像の選択」について。人間によって選ばれた画像には著作権が発生し、選ばれなかった画像には著作権が発生しないことになります。つまりこれは「編集著作物」の考え方に近いでしょう。Aさんの選択に創作性が認められるには、Aさんの精神的活動の成果が顕れている必要があります。この主張には、注意が必要です。  というのは、アメリカの事例ですが「サルの自撮り」事件では、サルが大量に撮影した中から人間が選んだ事実があるにも関わらず、その人間に著作権は発生しないとされたからです。恐らくこれは日本でも同じ判断になるでしょうし、サルがAIに変わっても同じように判断されると思うのです。 https://wired.jp/2014/08/10/monkeys-selfie/  また、Aさんの主張が「試行錯誤のプロセスはこれだけ大変だった」と受け止められてしまうようでは、悪手です。Bさんは、それは「額に汗」理論だと否定するでしょう。こうやって考えると、Aさんの主張が認められるハードルは、意外と高そうな気がするんですが……どうなんだろう? https://www.naganodaiichi-lo.jp/colum/co-140.html  アートであっても著作物ではないことはあり得ます。恐らく、個々の事例で判断は変わるため、簡単に白黒付く話ではないでしょう。なお、人間が直接関与している「AI生成画像へ加工」しているケースは、どの程度加工しているか? という程度の問題になってくるので、今回の思考実験からは除外しました。 ◆ pixiv、画像生成AI作品と「共存できる道を模索」 フィルタリング機能実装へ〈KAI-YOU.net(2022年10月20日)〉 https://kai-you.net/article/85074  ユーザー参加型メディアが、AI生成物とどう付き合うか? という難題を突きつけられています。#542では、ニコニコが奨励金の分配をしないと判断した事例をピックアップしました。pixivはひとまず、AI生成物をフィルタリング可能な形とする方向で共存する道を図るようです。「隔離」と言ったほうがわかりやすいかも? https://hon.jp/news/1.0/0/37190  逆に「小説家になろう」では「必ず加筆修正が必要」という回答が出ているようで、無加工AI生成物の投稿を認めない方向に進んでいます。プラットフォームの方針で作品が排除されるのはAI生成物に限った話ではありませんし、発表する「場」の選択肢が他にない状態というわけでもありませんが、なんかちょっとモヤモヤしますね。 https://togetter.com/li/1960841 よかったらこの記事をSNSでシェアしてください! Twitterでシェア Facebookでシェア 本稿は CC BY-NC-SA 4.0でライセンスされています。転送歓迎。ウェブなどへ転載する際は、HON.jp メールマガジンが出典であることを表記するのと同時に、HON.jp News Blogへのリンクを張っていただけると嬉しいです。 https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja 会員申込みや寄付などについて  NPO法人HON.jpは、本(HON)のつくり手をエンパワーするため、ウェブメディア「HON.jp News Blog」やメールマガジンなどのメディア事業、出版創作イベント「NovelJam」の開催やセミナー・講習会などのイベント事業、出版事業などを行っています。  当法人の事業活動は、みなさまのご支援のおかげで継続できています。いつもありがとうございます。正会員・賛助会員(個人/法人)は随時募集しており、さまざまな特典もご用意しています。また、寄付も受け付けています。さらなるご支援をよろしくお願いいたします。 ■ NPO法人HON.jp正会員のご案内 https://www.aiajp.org/application/regular-member ■ NPO法人HON.jp賛助会員のご案内 https://hon.jp/news/supporter ■ NPO法人HON.jpへの寄付受付窓口(Syncable) https://syncable.biz/associate/honjp/donate/ ■ 読み終えた本で寄付できる「チャリボン」 https://www.charibon.jp/partner/hon-jp/ 広告掲載のご案内  HON.jp News Blogは、これからも本(HON)を作ろうとしている人々に、国内外の事例を紹介し、デジタルパブリッシングを含めた技術を提供し、意見を交換し、仮説を立て、新たな出版へ踏み出す力を与えるメディアです。運営は、NPO法人HON.jp メディア部会が行っています。このメディアへの広告掲載は、随時募集しています。当メルマガへの広告掲載も可能です。詳しくは下記のリンク先をご覧ください。 ■ 広告掲載のご案内 https://hon.jp/news/ad 発行人:NPO法人HON.jp 編集人:HON.jp News Blog編集長 鷹野凌 mail: honjp@aiajp.org https://hon.jp/news/ 配信数:2536通 このメールマガジンは、HON.jp からのお知らせや、HON.jp News Blog 編集長 鷹野凌による「週刊ニュースまとめ&コラム」などを、原則、毎週月曜日の朝に配信しています。配信対象は、HON.jp News Blog から購読を申し込まれた方々と、これまで HON.jp とご縁があった方々です。 配信には Benchmark Email を利用しています。メール内のリンク URL はすべて bmetrack.com のサブドメインに自動変換されています。これは、Benchmark Email のシステムが開封率やクリック率などを計測しているためです。計測後、本来のURLへ自動転送されます。 不要な場合はお手数ですが、末尾の「配信停止」からお手続きください。 フォローして最新情報をチェック! 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