Subject: HON.jp メールマガジン #190 2022年7月25日版 From: HON.jp編集部 Date: 2022/07/25 6:02 To: honjp@aiajp.org 📕 週刊出版ニュースまとめ&コラムやHON.jpからのお知らせなどをお届けします。 Twitterでシェア HON.jp メールマガジン #190 2022年7月25日版 ISSN 2436-8245  ペンは銃より強しと言いますが、一発の弾丸がこれほどの影響を世の中に与えてしまうとは。この無力感と戦い、己を奮い立たせるための言葉なのでしょうか。負けたくない。暴力反対! 戦争反対!(鷹野) 【自社広告】 あなたの読み終えた本が、本(HON)のつくり手をエンパワーメントする活動の力となります。古本で寄付する仕組み「チャリボン」をぜひご活用ください。 https://www.charibon.jp/partner/hon-jp/ 週刊出版ニュースまとめ&コラム #531(2022年7月17日~23日) Twitterでシェア  編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。同じ内容を HON.jp News Blog のウェブサイトでも公開していますので、TwitterやFacebookなどでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。 https://hon.jp/news/1.0/0/36539 【政治】 ◆ 「ネタバレサイト」や「ファスト映画」摘発相次ぐも依然横行〈NHK | エンタメ(2022年7月20日)〉 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220720/k10013726931000.html  著作権法違反での摘発による抑止効果が、まだあまり出ていないようです。これ、とくに「ネタバレサイト」という呼称は、なにが問題なのかをヴェールに包んで見えづらくしているような気がします。問題になっているのは「セリフをすべて無断転載しているサイト」なんですよね。感想でネタバレがあるとかいう次元ではないのです。  「ファスト映画」の亜種では「切り抜き動画」というのもあって、公式配信から切り抜いた海賊版をいかに速く出すかのスピード競争になっているそうです。かつての2ちゃんねるまとめブログの、動画版みたいなイメージでしょうか。これには、公式自ら放送前に切り抜き動画を用意することにより、海賊版の抑止を狙う動きなんて事例もあります。この対策が素晴らしいのは確かですが、他方、わざわざこんな手間をかけなきゃいけないのか、とも思わされます。 https://www.famitsu.com/news/202207/20269084.html  最近見かけて「うわぁ」と思ったのは、Twitterに投稿されたアニメの場面カットを凄まじい数エンベッドしている記事。Twitterへの投稿は複数名(5~6人?)ですが、繋ぎ合わせるとほとんどストーリーがわかるような構成になっています。これも「ネタバレ」や「ファスト」の亜種でしょう。場面カットのあいだには、感想やテキストだけの実況ツイートも少し混在させてるあたりが、じつに巧妙。  あくまで想像ですが、恐らくこの記事作成専用の工作アカウントを複数運用し、「まとめてるだけ」という言い逃れができるようにしているのではないか? と。ただ、このような状況も、10月1日施行の改正プロバイダ責任制限法で発信者情報開示請求手続きが簡素化されることや、海外事業者の登記を求める動きなどにより、今後は少し変わってくるのではないか、と思われます。 https://www.businesslawyers.jp/articles/975 ◆ 権利者不明作品、一元窓口で利用可に 23年法改正へ議論〈日本経済新聞(2022年7月22日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE199FJ0Z10C22A7000000/  7月22日に文化庁文化審議会著作権分科会法制度小委員会第1回目の会合が行われたことを受けての記事。私は都合がつかず傍聴できなかったのですが、配布資料によるとこの「簡素で一元的な権利処理に係る新しい権利処理の仕組みの導入について」以外に、「研究目的に係る権利制限規定の創設について」「立法・行政のデジタル化に対応した内部資料の公衆送信等について」「損害賠償額の算定方法の見直しについて」が討議される予定になっています。どれも気になる。追いかけます。 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r04_01/ 【社会】 ◆ デジタル出版論の連載は1回お休みをいただきました。 ◆ 無断転載や過激な二次創作が横行も運営が対応せず チャット小説サイト『テラーノベル』が炎上状態に〈ガジェット通信 GetNews(2022年7月18日)〉 https://getnews.jp/archives/3314443  小中学生の利用が多く、モラルもへったくれもない子供の遊び場状態になっていたようです。そのうえ運営側の対応も悪く、転載された被害者側が「本人確認書類」と「印鑑登録証明書」まで提出する必要がある、というハードルの高さ。告発ツイートがバズって炎上状態となり、「運営体制に関するご説明」が公表されるに至っています。  ちなみにこの記事の末尾にも記されていますが、テラーノベル代表取締役の蜂谷宣人氏は、2016年にキュレーションメディア問題で炎上した「MERY」に関わっていた過去が。Wantedlyの経歴を見る限り、当時はサーバーサイドのエンジニアだったようなので、恐らく記事作成の運用には関わっていないとは思います。ただ、なんというか……因縁めいたものは感じてしまいます。 https://www.wantedly.com/id/nobuto_hachiya ◆ 「図書館」(仮称)リ・デザイン会議、「「図書館」(仮称)リ・デザイン提言」第0版を公開〈カレントアウェアネス・ポータル(2022年7月21日)〉 https://current.ndl.go.jp/node/46526  2050年を見据え、図書館の位置づけを再定義しようという会議。(仮称)とあるように、恐らく呼称を変えることも視野に入れているのでしょう。2020年の発足当初、グループに首を突っ込んでみたのですが「どのような立場からの参加であれ、傍観者、ウォッチャーというスタンスは好ましくなく、歓迎しません」というスタンスが貫かれており、私の知識や経験で口を挟むのは難しいと判断。グループには参加せず、外から様子を眺めるに留めてきました。  第0版を拝見しましたが、項目一つ一つにさまざまな背景があり、関係者のさまざまな思いが込められていることを思うと、やはり、うかつなことは言えないな、というのが正直なところ。それでも「利用者が情報を発信できる場になりたい、インプットだけでなくアウトプットできるところ」というウィッシュがあることについては、本(HON)のつくり手をエンパワーするNPOの理事長として非常に嬉しく思った、という感想は伝えておきたいです。  というのは、たまたま最近、日本図書館協会の「公立図書館の任務と目標」に目を通す機会があったのですが、発信することへの支援という観点が欠けているように思えたのです。はっきり言って、不満でした。そういう意味で、リ・デザイン提言ではアウトプットにも目を向けてもらえたことが、本当に嬉しい。わあい。 https://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/236/default.aspx ◆ 1兆ウォン市場「Kウェブトゥーン」、堂々と学問に仲間入り〈東亜日報(2022年7月22日)〉 https://www.donga.com/jp/article/all/20220722/3526573/1  ネイバー文化財団が4億ウォン(約4000万円)出資し、韓国アニメーション学会と韓国キャラクター学会の企画により『漫画ウェブトゥーン理論叢書』50巻と『漫画ウェブトゥーン作家評論選』50巻を刊行したとのこと。こういう学術理論の構築と評論がきっちり成されることは、次世代の育成にも繫がることでしょう。日本も見習わねば。 ◇ 女性をさげすむ表現にあふれた韓国のウェブトゥーン〈Chosun online 朝鮮日報(2022年7月22日)〉 https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/07/21/2022072180209.html  その一方で、ほぼ同時にこういう声が挙がっていることも興味深いと思い、補足でピックアップしておきます。「嫌悪表現にあふれるオンラインコンテンツが、若い世代に偏った性認識を植え付けかねないと指摘」までであれば、表現が批判や批評に晒されることも「表現の自由」の範疇ですから容認できます。ただ、これがさらに「だから規制すべき」論に発展しかねないのが怖いところ。あるいは、法規制ではなく「自主的な対応を要請」みたいな方向性とか。日本でもよくある光景なので。 【経済】 ◆ 「漫画BANK」摘発の舞台裏 中国農村に住む運営者を直撃 驚きの言い分とは… - クローズアップ現代〈NHK(2022年7月19日)〉 https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pqdob79X0P/  先週(#530)ピックアップした「漫画BANK」の運営者が中国で摘発された件、なんとNHKクローズアップ現代取材班が現地まで行って直撃取材していました。「すべて1人でやった」「ほとんど儲けはない」「自分はこれ以上追及されることはない」「日本語は全くわからない」といった主張には、そんな馬鹿な話があるかと言いたくなります。トカゲの尻尾っぽい。名義貸し? https://hon.jp/news/1.0/0/36512  広告のソースコードからヨーロッパのIT企業(どうやらスペインのExoClickらしい)が関与していたことまでは判明するも、電話取材をしたら繫がらず。ウェブサイトに載っていた情報も削除されてしまったとのこと。不用意に触って逃げられてしまった感があります。デジタルGメンは今後、このIT企業に法的措置を行うとしていますが、うまくいくか。 https://web.archive.org/web/20200814113054/https://www.exoclick.com/the-manga-and-anime-market-is-big-business/ ◆ DMMがMastercardの取り扱いを突然終了へ いきなりの発表に利用者から困惑の声、もちろんFANZAも〈ねとらぼ(2022年7月20日)〉 https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2207/20/news177.html  初報でDMM(および成人向けのFANZA)から理由の説明はありませんでしたが、恐らく、少し前からたびたび話題になっていた「クレジットカード会社による表現規制」の影響ではないか? と推測されています。同社は続報でも「諸条件が折り合わず」「詳細は差し控える」としか回答しておらず、守秘義務契約の関係で真相は闇の中となっています。 https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2207/21/news088.html  ただ、たとえばとらのあな通販で成人向け(R18)同人誌を委託していた作家が「MasterCard取り扱い店の審査を行う企業より、Webページを用いての作品紹介・通信販売の取下げを行うよう弊社まで連絡がありました」と、具体的な社名が挙げられたメール連絡を暴露し話題になったことがあるのは事実です(2016年)。民間の表現規制なので、具体的にどうやって対抗すればいいか? が難しいというのが正直なところ。 https://togetter.com/li/990667  個人的に解せないのは、以前「スケブコイン」発行のニュースをピックアップした際にも指摘したことですが、DMMは暗号資産取引所「DMM Bitcoin」を持ちながら、自社のコンテンツ販売には暗号資産決済を対応させていないのですよね。特定企業に依存しない決済手段として、また、投機以外の暗号資産の使い道として、それなりに有望だと思うのですけど。値動きが激しすぎる? https://hon.jp/news/1.0/0/36282 ◆ NTT西日本・森林社長「電子書籍配信、22年度に海外へ」〈日本経済新聞(2022年7月22日)〉 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF16BN90W2A610C2000000/  NTT西日本の新社長が、子会社NTTソルマーレの「コミックシーモア」について、「22年度中に協業先を見つけ、海外でのサービス開始を目指す」と意気込みを語っています。これを読んでふと思い出したのですが、NTTソルマーレは今春にアメリカ向けの「MangaPlaza」をすでにスタートしているはず。なぜこの段階で「サービス開始を目指す」などという言い方をするんだろう? ちょっと不思議。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000411.000009284.html 【技術】 ◆ 「この原稿は違法です」中国のワープロソフト、未公開小説をロック〈MIT Tech Review(2022年7月20日)〉 https://www.technologyreview.jp/s/280875/a-million-word-novel-got-censored-before-it-was-even-shared-now-chinese-users-want-answers/  日本でも事業展開しているキングソフト(金山弁公軟件)のクラウド型オフィスソフト「WPS Office」での事件。ロックされた時点では作者だけが編集できる状態だったはずで、その時点から監視され検閲を受けてしまったという問題です。また、被害者曰く、内容的にもそのまま公開可能な作品であるはずとのこと。そういう判定根拠の問題でもあるでしょう。いずれにしても、検閲に慣れている中国ユーザーですら「これは行き過ぎ」と批判の声を上げているそうです。  なお、これは中国に限った問題ではありません。Googleも以前、非公開ストレージの写真が自動判定で削除対象となる事件を起こしています。 https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1911/19/news140.html  Appleも、iPhotoの「写真」に児童性虐待記録物が保存されると自動検出し、アカウントを停止して当局に報告する機能を実装しようとして炎上、取り止めるという事件がありました。あっちもこっちもディストピア。 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2109/04/news028.html ◆ JASRACが個人クリエーター向け情報管理システム 新理事長に聞く〈日経クロストレンド(2022年7月22日)〉 https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00483/00017/  【政治】のところで触れた「簡素で一元的な権利処理」に関連して、民間でもこういう動きがあることはフォローしておく必要があるでしょう。ブロックチェーン技術を活用した、存在証明が受けられる楽曲情報管理システム「KENDRIX」についての記事です。どのブロックチェーンを使っているのか、この記事では明確になっていないのですが、調べてみたらAWSが提供している「Amazon Managed Blockchain」からエンタープライズ向け「Hyperledger Fabric」で構築している、という記事が見つかりました。パブリック型ではなく、プライベート型(コンソーシアム)ですね。 https://www.neweconomy.jp/posts/239417 よかったらこの記事をSNSでシェアしてください! Twitterでシェア Twitterでシェア 本稿は CC BY-NC-SA 4.0でライセンスされています。転送歓迎。ウェブなどへ転載する際は、HON.jp メールマガジンが出典であることを表記するのと同時に、HON.jp News Blogへのリンクを張っていただけると嬉しいです。 https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja 会員申込みや寄付などについて  NPO法人HON.jpは、本(HON)のつくり手をエンパワーするため、ウェブメディア「HON.jp News Blog」やメールマガジンなどのメディア事業、出版創作イベント「NovelJam」の開催やセミナー・講習会などのイベント事業、出版事業などを行っています。  当法人の事業活動は、みなさまのご支援のおかげで継続できています。いつもありがとうございます。正会員・賛助会員(個人/法人)は随時募集しており、さまざまな特典もご用意しています。また、寄付も受け付けています。さらなるご支援をよろしくお願いいたします。 ■ NPO法人HON.jp正会員のご案内 https://www.aiajp.org/application/regular-member ■ NPO法人HON.jp賛助会員のご案内 https://hon.jp/news/supporter ■ NPO法人HON.jpへの寄付受付窓口(Syncable) https://syncable.biz/associate/honjp/donate/ ■ 読み終えた本で寄付できる「チャリボン」 https://www.charibon.jp/partner/hon-jp/ 広告掲載のご案内  HON.jp News Blogは、これからも本(HON)を作ろうとしている人々に、国内外の事例を紹介し、デジタルパブリッシングを含めた技術を提供し、意見を交換し、仮説を立て、新たな出版へ踏み出す力を与えるメディアです。運営は、NPO法人HON.jp メディア部会が行っています。このメディアへの広告掲載は、随時募集しています。当メルマガへの広告掲載も可能です。詳しくは下記のリンク先をご覧ください。 ■ 広告掲載のご案内 https://hon.jp/news/ad 発行人:NPO法人HON.jp 編集人:HON.jp News Blog編集長 鷹野凌 mail: honjp@aiajp.org https://hon.jp/news/ 配信数:2535通 このメールマガジンは、HON.jp からのお知らせや、HON.jp News Blog 編集長 鷹野凌による「週刊ニュースまとめ&コラム」などを、原則、毎週月曜日の朝に配信しています。配信対象は、HON.jp News Blog から購読を申し込まれた方々と、これまで HON.jp とご縁があった方々です。 配信には Benchmark Email を利用しています。メール内のリンク URL はすべて bmetrack.com のサブドメインに自動変換されています。これは、Benchmark Email のシステムが開封率やクリック率などを計測しているためです。計測後、本来のURLへ自動転送されます。 不要な場合はお手数ですが、末尾の「配信停止」からお手続きください。 フォローして最新情報をチェック! 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