【EPUB有料連載リンク】第3回 電子出版と著作権 — ジェリー・パーネル/訳・林田陽子「新・混沌の館にて」

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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。

 いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、今年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。

 業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部

9月コラムより

電子出版と著作権

 我々は、先日の夜、今年のWriters of the Future賞(訳注:新人SF作家を発掘するコンテスト)の授賞式のディナーに行った。審査員仲間との会合は、いつ行っても楽しい。彼らの多くは古くからの友人だが、最近はあまり会っていなかった。Fred PohlとAnnie McCaffreyは、今年は来られなかったが、ディナーのテーブルにはEric Flint、Mike Resnick、Annieの息子でAnnieのシリーズ物を引き継いで書いているToddや、魅力にあふれる以前の受賞者たちがいた。現役の作家たちが一堂に会すると、ビジネスと契約の話になるのが常だ。作家の中には、顔を合わせた時に創作術とか、キャラクターをどう考えだすか、といった文学にまつわることを話す人もいるかもしれないが、私はほとんど会ったことがない。我々はビジネスの話をすることが多いが、まだ夢一杯の新人たちはそれを聞いて失望してしまう。

 Mike Resnickは精力的に活動している。彼は自分の初期の作品を電子化する権利を保有している。そして、商用サービスを利用して古い作品をスキャンさせて、Amazon Kindleフォーマットに変換するのが、今は簡単にできることを発見した。さらに、Amazonと契約してそれらの本を公開するのも簡単だ。Amazonに価格を設定させれば、著作者は売り上げの70%を得られる。私はこういうことはすべて知っていた。しかし、驚いたのは、 Mikeがこれを始めて3カ月なのだが、1カ月に2〜3百冊の本が売れていると言ったことだ。出版社がこれまで新刊の小説に払ってきた多額の前金に比べれば微々たるものだが、こんなに簡単にできるとすれば、見過ごせない。Mikeの場合、彼の昔の本の多くはまだ「絶版になっていない」と出版社は言っているそうだ。そのため、印刷本の著作権はまだ彼に戻っていないが、それは問題ではない。電子書籍の著作権を持っているのは、出版社ではない。AmazonのKindle本は誰でも出版できる・・・

【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/

作家たちの模索

 米国の著作者たちは、著述業は利益を得るためのビジネスだという意識をしっかりと持っています。作家に代わって出版社に営業をして、利益の一部を受領する代理人制度があるのはその表れといえるでしょう。

 米国では、好景気の頃に、良質の書籍を出す出版社が投機目的で買収されて、激減したという事情もあって、かなりのキャリアと実績のある作家でも、今は印刷体の本を出すのが難しくなっているようです。

 彼らはAmazonやApple、その他の個人電子書籍出版サービスを利用して、自分で過去の作品を電子書籍化して販売するなど、少ない販売部数で一定の利益が得られる方法を必死で模索しています。

 2010年の3月に、4年間続いていたこのコラムのWebサイトへの掲載終了が決まりました。熱心な読者のいるコラムだっただけに、私は長年愛読してくださっている読者のためにも、コラムを提供し続ける方法が他にないものかと考え始めました。私自身も読者の一人として、また、雑誌掲載時から5年間翻訳を続けた翻訳者として、なんとか継続したいという気持ちが強かったのです。

 どのような方法があるか考えながら、いろいろ調べ始めました。最初は、翻訳記事の委託販売先を探しました。米国で何年も前からあったAmazonの電子書籍の個人出版が日本で始まらないかと期待していたのですが、その時点では、日本ではまだ行われていませんでした。

 電子書店はすでにいくつかありましたが、こちらも春先の時点では、コミック主体で書籍が少ないところや、法人しか委託できないところしかなく、結局委託先を見つけることはできませんでした。電子書籍と言われても、作り方さえまったく分かりませんでした。

 PDFやWordのファイルを購読者へのメールに添付して送付するにしても、ファイルが簡単に転送やコピーできることが不安でした。宣伝して購読を受け付けるためのホームページも必要です。結局、最後に残ったのが、個人でWebサイトを立ち上げて、記事を掲載するWebページを制作して、パスワードを設定して購読者のみが閲覧する、という方法でした。代金は直接収納しなければなりません。

 Webコンテンツへの課金は「1セントの壁」と言われるほど難しいものとされていましたが、他に方法を考え付きませんでした。

 実際に行動を起こす前に、いくつか解決しなければならない問題もありました。n

問合せ先:「新・混沌の館にて」サイト( http://www.sciencereadings.com/

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